アンプの REC セレクタは劣化セレクタ


最近のアンプでは、いわゆる裏録音ができるように、再生用の入力セレクタのほかに REC セレクタがついているものが多いです。
たとえば、REC セレクタを使うと CD を聴きながら FM をテープにダビングできるという便利なセレクタです。
ところが、この便利な REC セレクタが音を汚してしまう場合があるのです。

まず、再生用の入力セレクタを CD にしたとします。REC セレクタも CD にしたとします。
このとき、CD の再生音は入力セレクタを通過したあと、アンプとテープ・レコーダとに並列に分岐されて出力されます。
実はこれが音を汚す原因になっているのです。

最悪なのは、入力セレクタが CD に、REC セレクタも CD にセッティングされていて、かつテープ・レコーダの電源が OFF になっている場合です。

このようなセッティングの場合、単純に考えると CD の出力線にアンプとテープ・レコーダが並列につながっていることになります。
アンプとテープ・レコーダとは並列に接続されていますので、アンプの入力インピーダンス特性かテープ・レコーダの入力インピーダンス特性かのどちらかが悪いと、もう片方に伝えられるオーディオ信号が歪んでしまいます。
そして、多くの場合はテープ・レコーダの入力特性が悪くなります。それは、テープ・レコーダの電源を OFF にした場合です。

よくある例としては、アンプの入力セレクタも REC セレクタも CD を選択し、テープ・レコーダの電源を切ったまま CD を再生して鑑賞してしまうという誤りです。
テープ・レコーダは、アンプの REC OUT からの信号をテープ・レコーダ内蔵のプリアンプで受け取ります。
テープ・レコーダの内蔵プリアンプの入力インピーダンス特性は、テープ・レコーダの電源を入れているときにはリニアになっているのでほとんど問題がありません。
ところが、テープ・レコーダの電源を OFF にすると、ノン・リニアな入力インピーダンス特性になります。
つまり、CD からアンプに信号を送る経路の途中に、音質を劣化させるフィルタ(電源 OFF のテープ・レコーダ)を並列に挟んだことになります。

別に CD をセレクトしている場合だけに起こるのではなくて、入力セレクタと REC セレクタとが同じコンポをセレクトしていて、かつテープ・レコーダの電源が OFF になっていると問題になるのです。

テープ・レコーダの電源を OFF にすると入力インピーダンスがノン・リニアになるのは、テープ・レコーダの内蔵プリアンプがトランジスタや FET を使っているためです。
トランジスタや FET の入力インピーダンスは、電源が入っているときにはリニアになっていますが、電源を切るとただのダイオードになってしまいます。そのダイオードの特性はノン・リニアなのです。


結論:
テープ・レコーダの電源を OFF にした状態で CD を再生するときは、REC セレクタは CD 以外のコンポをセレクトするようにしましょう。テューナを再生するときはテューナ以外のコンポを REC セレクトしましょう。つまり、入力セレクタと REC セレクタとが決して同じコンポを選択しないようにするのです。
こうすることで、CD(など入力セレクタで選択されたコンポ)の信号はアンプだけをドライブすることになり、音質の劣化を防ぐことができます。
たとえば、レコード・プレーヤを持っていない人の場合、普段は REC セレクタを Phono にしておくと安全です。
REC セレクタに REC OFF があればそれを選択します。
アンプの機種によっては REC OUT というスイッチがあるものがあります。この場合は、普段は REC OUT を OFF にしておきます。


注意:
ここで、テープ・レコーダと書いているのは、アンプの REC OUT に接続された録音用のコンポ一般を指します。MD でも DAT でも DCC でもオープン・リールでも、事情は同じです。


例外:
もしも、お使いのテープ・レコーダの入力プリアンプが真空管でできている場合には、このような REC セレクタの配慮は無用となります。
真空管は、電源を切ると回路が遮断され、アンプの REC OUT に何もつないでいないのと同じ状態になるからです

この記事は島田博幸さんに提供していただきました。

Audio FAN